焚き火がもつ癒し効果7つの視点

2020.10.31 (土)

このところのキャンプ熱もあって、焚き火がクローズアップされています。情報過多で目まぐるしく変わる毎日。心が疲れることが多い中、焚き火がもつ魅力に癒されたいという人が増えているのも後押しになっているのはないでしょうか。焚き火は一見ブームのように思われていますがそうではありません。もともと人間の暮らしの基盤にあるものです。そうした背景もふまえ、焚き火がもつ癒し効果についていくつかの視点でまとめてみました。

そもそも癒しとは

僕たちは癒しという言葉をよく使いますが、その意味のとらえ方は人によってまちまちです。「癒しとは心理的な安心感を与えること。またはそれを与える能力を持つ存在の属性である」(ウイキペディア)「肉体の疲れ、精神の悩み、苦しみを何かに頼って解消したりやわらげたりすること」という意味もあるようです。いずれにしても心と身体の疲れ、悩みをやわらげ安心できる状態にすることというイメージですね。本記事では癒しの意味をそこに置き、焚き火をするとなぜ癒しの状態になるのかを挙げていきます。

火のある暮らしは人間の営みの原点

焚き火を見ると何だか懐かしい気持ちになります。焚き火は人の心を解きほぐし毎日の生活や仕事でぎすぎすした気持ちを溶かしてくれます。ほっと気持ちをリセットさせてくれます。火はいつも暮らしの真ん中にありました。

諸説ありますが、人類が最初に手にした火は自然火災によってもたらされたものだと考えられています。落雷、山火事、火山の噴火などによって火の存在を知ったと言われます。中国で発見された北京原人の遺跡から火を使った痕跡が発見されていて、人類と火の歴史は少なくとも50万年前とも100万年前にもさかのぼります。

こうして手に入れた火は、夜の闇を照らす「明るさ(光)」と寒さをしのぐ「暖かさ」を与えてくれました。夜行性の動物から身を守ってくれたり、煮たり焼いたりして食生活の幅を広げました。そんな火を大切にし、絶やさぬように番をして守りつづけてきました。このように太古の昔から人類は火からさまざまな恩恵を受けて進化してきました。

野外へキャンプに行ったときのことを想像してみてください。日が沈み気温が下がって寒くなってきたら火をおこして身体を暖めます。雨が降ったり水あそびをして衣服が濡れてしまったら、火を使って乾かします。ごはんの支度を始めたら、火をおこして加熱調理します。火を使うことで生ものを安全に口にすることができます。

夜が近づき、あたりが暗くなると火をおこして明かりを灯します。火があることで夜間でも目印ができて活動しやすい環境がつくれます。このように生活していくために必要な3要素「衣食住」を火が司っています。まさに火は生活の基本にあるものです。

衣食住に加え、火がもつもう一つ重要な要素が心のやすらぎです。山の中など文明から遠く離れた環境に身を置いたとき。災害など通常の社会生活を営む事ができない状況になったとき。人はストレス、不安、孤独を感じます。そんなとき暗闇の中で灯る明り、じんわりとした暖かさ、料理の美味しい香り、炎のゆらめきと薪の爆ぜる音が心を癒やしてくれます。焚き火がつくるこれらの要素が心の落ち着きを取り戻してくれます。

火があることで、自然に意識が向かったり、幻想的な美しさを感じたり、思い出が蘇ったり、心が揺さぶられたり、生きている実感が湧き上がってくるのは、こうした人類の歴史が僕たちの心にDNAとして刻みこまれているからではないでしょうか。焚き火は人と自然を近づけてくれる相棒的存在です。火のある暮らしが人の心を癒してくれる原点にあります。

焚き火の癒し効果を示す研究事例

焚き火に癒し効果があるのかの科学的見解には諸説あります。ここでは代表的なものを3つ挙げてみます。

一つ目は大阪ガス技術研究所が行った研究です。

火にはなんらかの心理的効果があり、コミュニケーションを促進する効用があるのではないだろうかという仮説をもった。環境心理学の分野では、「自然の風景には癒しの効果があり、見ていると集中力が回復することがよく知られており、火にも同様の効果があるのではと考えたのである。

そこで、部屋に暖炉があって火が見える条件と暖炉がない条件を設定し、それぞれの条件において初対面の二人が会話をする実験をすることで、火にコミュニケーションの促進効果がある

という結果が得られています。関西学院大学の実験でも同様に暖炉の火の前にしばらくいた被験者はリラックス感や人生への肯定感が上昇したことが確かめられています。

二つ目は、米国科学アカデミー紀要に寄せられた研究報告です。
ナミビア・ボツワナのジュホアン族に関する研究によると、夜のたき火の明かりには人々の想像力をかきたてる効果があり、また、たき火があることで夜の活動時間が延び、自給自足の生活を営むための時間以外の社会的な営む時間が確保されるため、物語を話しやすくなる。

火明かりのもとで伝えられた物語は、聴衆に語り手と同じ情緒的な波長を与える効果もある。人類の祖先のコミュニティにおいても同様に、炎が人々の心を拡張させて社会的関係の充足に貢献したと考えており、想像力を介して精神的理論を引き起こし、コミュニティにおいて協力や信頼関係の形成に重要な役割を果たしていた

との文献があります。

三つ目は「ゆらぎ」による効果です。規則性のない空間的・時間的な変化や動きのことを「ゆらぎ」と言います。自然界に存在するさまざまなゆらぎ現象のひとつに「1/fゆらぎ」と呼ばれるものがあります。1/fゆらぎは、木もれ日、水の流れる音、波の音、暖炉の炎のゆらめき、ろうそくの炎、風に揺れる木立、雲のながれ、雨の音などにあらわれます。

規則的でもまったくの不規則でもない調和がとれた状態であるゆらぎが人間の生体活動にいろいろ影響を及ぼしていると言われています。こうした環境に身を置くとき、人間の脳からα波が出てきます。α波は脳が休んだリラックス状態をつくります。1/fゆらぎを世に問うたのは、物理学者で東京工業大学名誉教授の武者利光氏です。焚き火にはこうした1/fゆらぎ効果があります。

時代と環境の変化~デジタルAI化・自然災害・オンライン

思い立ったら手ぶらで焚き火ができる場所。僕たちが運営する焚き火専用フィールドをbasekokko(ベースコッコ)と呼んでいます。Kokkoはフィンランド語で焚き火を意味する言葉です。

ある時、basekokkoへITデジタル最前線で仕事をしている方がいらっしゃったことがあります。なぜそんな人がわざわざ焚き火をしにいらしたのか質問してみました。「AI技術を考えるとき人間とは何かが問われます。ITはたかだか何十年、それに対し火を焚く歴史は何万年という単位です。焚き火をすることで時間の流れ方、人との関わり方を見つめ直してみたいという思いがあったからです」こんな話をしていただきました。

現在はデジタルAIの時代です。AIによって人間がやってきた仕事が置き換わっていくと言われています。そのうち人間がやることはなくなるんじゃないかとまで言う人もいます。世の中はどんどん便利に効率化されていきます。便利になればなるほどクローズアップされてくるのが人の心ではないでしょうか。焚き火には人の心に触れる要素があります。こんな時代だからこその焚き火の魅力と言えます。

一方で自然災害が後を絶ちません。大型台風や集中豪雨による堤防決壊や土砂災害など観測史上初といったこれまでの経験では予測できないようなことが起こっています。被害に見舞われたとき必要になるのが明かりと暖と食事です。焚き火はこの3つをつくります。非常事態に備えて焚き火ができるようになっておくことは誰もが持ちたい技術と言えるのではないでしょうか。そして焚き火は人の心もあたためてくれます。行き場を失った状況で癒しを与えてくれる存在でもあります。

新型コロナ禍の影響もあり、オンラインが一気に普及しました。人との接点の持ち方も変わっていきました。直接会えない分、コミュニケーションが円滑にできなかったり、気持ちがアップダウンしたりするケースも出ています。メンタルやコミュニケーションの重要性が今までにも増して問われるようになりました。焚き火は心を寛容にしコミュニケーションを活性化します。ここ数年の状況をふまえ、今焚き火のもつ力は時代の要請とも言えるでしょう。

五感を呼び覚まし癒される

人間には五感があります。五感とは、目・耳・舌・鼻・皮膚を通して生じる五つの感覚で視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚といいます。日常生活の中で無意識のうちに使っているものです。焚き火をすると一度に五感が開き、一つひとつが研ぎ澄まされていきます。五感すべてが一度に感じられるものなんて他ではそうそう見当たらないと思います。

木を見ているとあたたかさを感じます。勢いよく燃える炎、ゆらめく姿、落ち着いて熾火になって赤々とした火。いつまでも眺めていて飽きることがありません。無意識のうちに見入ってしまう自分がいます。夕方になりだんだんと暮れていく夜空をやさしく照らす炎。「夕暮れってこんなにきれいだったんだ」改めて心が動かされます。焚き火をすることで周辺の闇が際立ってきます。人工の光がない中であれば漆黒の暗さを感じることができます。

焚き火ならではのパチパチと薪が爆(は)ぜる音。小鳥のさえずり、虫の声、風がそよぐ音。日頃は気にもとめることがない自然の音が心地よく入ってきます。木の香り、土のにおい、森の香り、煙のにおい。燃やす薪によってにおいは変わります。焚き付けを拾い、薪をくべます。手袋をしないで直接触わることで木のぬくもりや地面の温度を感じます。土の感覚は素手でないとわからないものです。

鍋をかけた焚き火を見つめながらゆっくりと過ごす時間は心を落ち着かせてくれます。「大根の葉っぱってこんなにやさしい味がするんだ」「茄子を焼くとジューシーで甘味が出てくる」焚き火で野菜を焼くとそのものの甘みや旨味が感じられ、素材を生かした料理を味わうことができます。食材そのものの美味しさがわかると生活の質まで上がっていきます。

寝転がって空をぼーっと眺めたことってありますか?見渡すかぎりに広がる空が刻々と表情を変えていく様子。虫の声にはこんなにいろいろなものがあって季節によって変わっていくこと。風が吹いてくる方向、風の強さ、風が運んでくる香りにも違いがあること。焚き火をすると周囲の環境変化に気づくことができます。

basekokkoにはいくつかの薪棚があります。割りたてのもの、乾燥させて時間の経ったもの、針葉樹と広葉樹などに分かれています。薪棚の前を通ると木の発する何とも言えない良い香りに心地よさを感じます。薪が乾燥しているときは乾く音も聴こえてきます。まな板やテーブル板用で切り出したスギ、ヒノキを部屋の中に置いておくだけで、木の香りが漂い、気持ちが安らいでいくのがわかります。

以前映画で、山奥の村に林業研修にいった若者が都会に戻ってきて、建築現場の木材の香りに吸い寄せられていくシーンをみたことがありますがわかる気がします。木がもつ力はこんなところにもあります。

じっくり見る、耳を澄ます、香りを感じる、素材を味わう、素手で触る。普段使わない五感を一度に開くと、感性が研ぎ澄まされていきます。自然と一体になって五感が研ぎ澄まされるとだんだんと頭が冴えてくるのがわかります。すると今まで見逃していたようなことにもアンテナが立つようになります。小さな変化が感じられるようになります。

毎日の生活で「気づける」ことはとても大切な感覚です。焚き付け拾いに行ったとき、「こんなところに木の実が落ちていた」とたのしそうにしている姿を見ることがあります。子供の頃は五感が働いていました。ちょっとしたことにも感動していました。それは感受性や好奇心が高いからです。小さなことにでも感動できる力は表現力、想像力を培うことにつながります。こうしたことの積み重ねで毎日のささやかなことにも幸福感を感じることができるようになります。

現在、山と町を行き来する二拠点生活を送っています。山の拠点は標高700メートル。人はいないし雑音もしません。シーンと静まりかえる時間が続きます。聞こえてくるのは風がそよぐ音、木々や葉の音、小鳥のさえずり、虫の声だけ。山に来ると空気そのもののおいしさを感じます。夜は人工的な明かりがないので真っ暗闇の世界になります。

朝起きると体感温度が違う。落ち葉の数が増えた。日の暮れ方が早くなった。日々季節の移り変わりも感じることができます。こうした環境に身を置くと五感が研ぎ澄まされるのを実感します。同時に頭の中がクリアになっていきます。焚き火で五感が覚醒しアンテナを立てられるようになることで、より自分の中にあるものが鮮明に感じられるようになります。五感は人間らしさを取り戻す感性です。こころとからだはつながっています。

ストレス社会の中、自然から離れた生活を続けていると身体はさまざまな変調をきたしてきます。シンプルに感覚を感じることが心身ともに健康でいられる秘訣でもあるのです。

安心安全な場をつくる

この写真をご覧になってください。これは焚き火basekokkoの日帰りイベントに来ていただいた人たちがほぼ半日焚き火を場を共にした最後のシーンを撮影したものです。開始から3時間ちょっと経った頃です。みんな穏やかな表情で黙って火を見つめています。沈黙ですがまったく違和感はありません。その場にいる人がみんな分かり合えた自然な状態になっています。

最初はお互い初対面でぎこちない空気が流れていました。焚き付けを拾いに行ったり焚き火を一緒につくる作業をする中でだんだんと打ち解けていきます。火を囲むと雑談も進みます。肩肘張らないたのしげな会話が弾んでいきます。そうしたことを経た後の場面です。

「普段話せないことが話せた」「こんなに心地よい気持ちになったのはいつ以来だろう」「素直な自分に戻れた感じがする」参加した人たちの感想です。話すことは放すことです。放すとは心を解放するという意味です。居心地が良くて安心できる。否定なく受け入れてくれる安全であること。人には拠り所になる場所が必要です。焚き火はそんな安心安全な場を自然なながれでつくってくれます。

集中とリラックスを同時につくる

マッチで着火する。軸をつたう炎を火口へそっと向けていく。集中せざるを得ない瞬間です。薪をいじる。崩れた薪を直して空気を通り道をつくってやれば火は勢いを増します。逆に広げると火は小さくなります。もうその世界に没入しています。火おこしは人のDNAを揺さぶります。そう焚き火には人間の根っこの部分を揺さぶる効果があるのではないでしょうか。焚き火をつくることだけで他では味わえない集中力が得られます。

焚き火見つめていると心が落ち着きます。集中とリラックスの両方が一度に得られるのは火の力がもたらす効果です。禅やマインドフルネスでいう「いまここに集中する」という要素を体感することができます。ヨガや瞑想は能動的にその状態を求めていくものです。それに対し、焚き火は傍らにいるだけで自然に集中とリラックスが同時に得られる状態になります。

集中とリラックスが相乗関係にあることはスポーツの世界でも見ることができます。現役時代のイチロー選手がバッターボックスに入る前に入念に同じ動作をしていたことは有名な話です。ボクサーがリングに上がる前に待合室で座っているシーン、力士が制限時間いっぱいで塩を取りに行くシーンなどもそうです。

焚き火と言えば夜というイメージがあるかもしれません。一方で朝の焚き火もオツなものです。そしてリラックス効果を上げるには、「朝焚き火」がおすすめです。ちょっとひんやりした朝の澄んだ空気と静寂、差し込んでくる朝日のあたたかさ、木々に光があたり葉の色が映える、こんな風景は日中とは別物です。

まずは大きく深呼吸してみます。新鮮な空気が身体の中を巡っていくのがわかります。近隣に焚き付けの枝を拾いに行くと小鳥のさえずりを聴くことができます。澄んだ空気と焚き火の空気が一体となって独特の心地よさをつくってくれます。

焚き火でコーヒーを淹れる焚き火カフェもおすすめです。拾ってきた焚き付けをもとに自分の手でイチから火おこししてお湯を沸かします。空を見上げながらミルで豆をひきます。沸いたお湯でゆっくりドリップします。ほんわかコーヒーのいい香りがしてきます。コーヒーメーカーで淹れるのと比較したら大変な手間で労力がかかります。でもいつもと違う一つひとつの動作をすることでゆったりとした気持ちになることができます。焚き火をいじりながらお酒を飲むとエンドレスな時間を味わうことができます。

焚き火づくりは同じようなことをしているように見えて、毎回条件が少しずつ違います。焚き火を上手につくるには工夫が要ります。試行錯誤しながら上手くいったときには達成感もあります。火をおこし、少しずつ安定するまで育てていく。薪を足したりいじってみたり。やがて燃えた薪が熾になり、最後にはきれいな灰になります。この一連の作業をする中で得られる集中力とリラックス効果を味わってみてください。

まとめ

現代社会は多忙な日常です。時間に追われ、毎日を流されていると大切なもの見失ってしまいます。たまには心に余裕が持てるよう「余白の時間」をもつ重要です。意識的に非日常をつくることです。そんなときに焚き火は最高の相棒になってくれます。そうだ焚き火だ!そんな気持ちで焚き火をしに行ってみてください。忘れかけた本当の自分の内面に気づくことができます。

 
初心者がひとり焚き火
できるようになる講座

焚き火コミュニケーション旬の情報をお届け!友だち登録をお待ちしています。

友だち追加

▼「焚き火のある日常」チャンネル登録はこちら▼

▼よかったらシェアお願いします▼

関連する投稿

現在の記事: 焚き火がもつ癒し効果7つの視点

お問い合わせはこちらからお気軽に

お電話でのお問い合わせ

048-212-7774

フォームからのお問い合わせ

お問い合わせフォーム »

コラムテーマ一覧

コラムバックナンバー

焚き火コラムランキング

⇑ PAGE TOP