焚き火と人の営みの歴史|コミュニケーションの原点

2021.05.01 (土)

焚き火を見ると何だか懐かしい気持ちになります。焚き火は人の心を解きほぐし毎日の生活や仕事でぎすぎすした気持ちを溶かしてくれます。ほっと気持ちをリセットさせてくれます。火はいつも暮らしの真ん中にありました。

本記事ではそんな焚き火の原点や今の時代と焚き火にまつわること、コミュニケーションとの関係性をまとめました。

焚き火で思い出す風景

焚き火ときいてどんなことをイメージしますか?「中学生のときに林間学校でやって以来かも」「子供の頃、一斗缶でごみを焼いたのを思い出す」「田舎の家でお風呂を薪で沸かした思い出がある」こんな話題が出てきます。

木枝を拾う、薪を組む、火をおこす、火を見つめる、煙のにおい。天を目指すように伸び上がり、刻々と姿を変える炎。やがて燃え尽き灰に還る。自然のサイクル、森の恵み。

焚き火の炎をほんやりと見つめていると心が落ち着いてきます、何ともいえない安らいだ穏やかな気持ちになれます。

枝葉が風にそよぐ音、小鳥のさえずり、小川のせせらぎや滝の音。耳に入るサウンドやリズム、さらには目にする光景など、自然が生み出す見るもの触れるものには心地よいものがたくさんあります。

これらは焚き火で広がる世界です。どれもシンプルで本能に働きかけてくるものばかりです。焚き火は現代人が忘れかけていた大切なものを取り戻す時間をつくってくれます。

火のある暮らしは人間の営みの原点

諸説ありますが、人類が最初に手にした火は自然火災によってもたらされたものだと考えられています。落雷、山火事、火山の噴火などによって火の存在を知ったと言われます。

50万年前に生存した北京原人の化石が北京郊外で発見されたとき、洞窟の中に焚き火の跡が残されていました。洞窟の中にあったという事実は、北京原人が生活の場で火を使っていたことを物語ります。

25万年前の第三間氷期に生存したと思われるネアンデルタール人化石にも、同様に火を使っていた証拠が印されています。さらに5万年前のクロマニヨン人の時代ともなれば、焚き火の灰だけではなく、洞窟の中に火打ち石や硫化鉱が発見されています。

火食のよさ、つまり火を通すと食物の味がうまくなることを発見したのは、食物調理上の革命的な出来事だった。登呂の住人たちは、おびただしい土器の破片の残したが、復元された土器の中に台のついた甕がある。この甕は、台を除く外側全面にススがついて黒く変色している。台を炉の灰の中に据えて、煮炊き用に使ったのである。(「火の生活文化史 火の博物館」から引用)

こうして手に入れた火は、夜の闇を照らす「明るさ(光)」と寒さをしのぐ「暖かさ」を与えてくれました。

夜行性の動物から身を守ってくれたり、煮たり焼いたりして食生活の幅を広げました。そんな火を大切にし、絶やさぬように番をして守りつづけてきました。このように太古の昔から人類は火からさまざまな恩恵を受けて進化してきました。

野外へキャンプに行ったときのことを想像してみてください。日が沈み気温が下がって寒くなってきたら火をおこして身体を暖めます。

雨が降ったり水あそびをして衣服が濡れてしまったら、火を使って乾かします。ごはんの支度を始めたら、火をおこして加熱調理します。火を使うことで生ものを安全に口にすることができます。

夜が近づき、あたりが暗くなると火をおこして明かりを灯します。火があることで夜間でも目印ができて活動しやすい環境がつくれます。

このように生活していくために必要な3要素「衣食住」を火が司っています。まさに火は生活の基本にあるものです。

衣食住に加え、火がもつもう一つ重要な要素が心のやすらぎです。

山の中など文明から遠く離れた環境に身を置いたとき。災害など通常の社会生活を営む事ができない状況になったとき。人はストレス、不安、孤独を感じます。

そんなとき暗闇の中で灯る明り、じんわりとした暖かさ、料理の美味しい香り、炎のゆらめきと薪の爆ぜる音が心を癒やしてくれます。焚き火がつくるこれらの要素が心の落ち着きを取り戻してくれます。

70年ほど前の日本では、暮らしの中の火は森林の産物から得る薪や炭からつくっていました。薪でお風呂を沸かし、かまどでごはんを炊き、囲炉裏や火鉢を囲んで暖をとり食事をしました。

囲炉裏やかまどが家族の会話を生み、お互いの関係を育んでいました。また、動揺「たき火」の落ち葉焚きのシーンにもあるように、焚き火のまわりで老若男女を問わず近所の人たちが話をする風景がありました。

子供の頃、田舎の家でお風呂を沸かすとき、かまどの中に恐る恐る薪を放り込みながらドキドキワクワクした経験をもつ人もいることでしょう。裏庭で親と一緒にごみを焼いていたのも思い出としてっていたりします。

人は暖かくて明るい場所に寄りたがります。自然に火のまわりに集まってきて会話を始めます。毎日の暮らしの中で火はコミュニケーションを促進する重要な要素だったと言えるでしょう。

火があることで、自然に意識が向かったり、幻想的な美しさを感じたり、思い出が蘇ったり、心が揺さぶられたり、生きている実感が湧き上がってくるのは、こうした人類の歴史が僕たちの心にDNAとして刻みこまれているからではないでしょうか。焚き火は人と自然を近づけてくれる相棒的存在です。

火と森のはなし

ひと昔前、囲炉裏やかまどで薪を燃やしたり、火鉢や七輪で炭をおこしたりして、暖をとり煮炊きをしてごはんをつくっていました。薪や炭は暮らしを支える大事な燃料でした。薪や炭を手に入れるために森や林がありました。

薪を燃やすと二酸化炭素を放出します。放出された二酸化炭素は木が生育するときに吸収されると同時に酸素を発します。山に入ると空気がおいしいのは木々から新鮮な酸素が出ているからではないかと思います。こうして自然のバランスがとれていました。

その後、石油や石炭、天然ガスが主な燃料に代わっていきました。こうしたものを燃やしたときも二酸化炭素が放出されます。その分、二酸化炭素が過剰になって地球温暖化が進んでしまっているのが現状です。

世界的にみても森林は減少を続けています。森は生命を育む源です。森林が減ると生物のもとがなくなっていきます。結果として種が絶滅していきます。さらに二酸化炭素の排出が増加します。生物種を維持し、地球温暖化を抑えるためには森林を守ることが必須になっているのです。

一方で日本の森林はどうなっているのでしょうか?スギやヒノキといった針葉樹は戦後一斉に人間の手によって植林されました。その後約50年を経て成熟期に入った木々は伐って使う時期を迎えています。

植林された木は成長すると密集してきます。密集が進むと太陽の光が届かない森になってしまいます。より良い木を育てるために本数を減らしていく必要が出てきます。

この作業を間伐(かんばつ)と言います。間伐することで木はしっかり根を張ることができます。間伐をしないと雨が降ったときの保水力が弱り、土砂災害を招きます。あちこちで起こっている自然災害の一因になっています。

さらに荒廃した森林は二酸化炭素の吸収力も低下します。こうした状況でありながら、木材の需要の減少や林業の担い手が少なくなったことなどを背景にして、山の手入れは進んでいないのが現状です。

昔の人は雑木林を手入れしながら薪炭林として大切に利用してきました。もしかしたら生活自体は不便なものだったかもしれません。化学燃料が入って暮らしが便利になっただけ失うものが増えているという皮肉な結果になっているのです。

焚き火をするには木が必要です。必要な木を森から伐り出します。木を伐ると切り株から芽が出て新しい木が生まれます。燃やした炭は畑の肥料になります。こうして環境のバランスがとれた循環する暮らしがありました。

伐った木が使えてそれがまた再生できるような燃料なんて他にはありません。焚き火は森を元気にします。便利になりすぎた現代、里山発想の原点に戻る暮らし方が教えてくれるものがあります。

物質的な豊かさに飽き足りた今、必要なのは心の豊かさそして人間らしさなのではないでしょうか?

今必要なコミュニケーションの原点

新型コロナといったウイルス禍、頻発する予期できぬ自然災害・・・日々今まで想像もできなかったことが起こっています。

そんな環境下、自分の内面を吐露する、ホンネで話せる場を持てることがますます大切になってきます。

人は人とのつながりを意識したときに仲良くなります。つながりをつくるのがコミュニケーションです。

コミュニケーションときくと、話し上手といったイメージをもっていませんか?口下手な人はコミュニケーションも苦手だとか。それは違います。手段を問わず、相手にちゃんと伝えることができたらそれでいいのです。

コミュニケーションとは「心と心の通い合い」です。話すことだけではありません。やり方や手段は問いません。焚き火はそんな心と心をつないでくれる存在です。

自分と向き合うこと、他者とフラットなコミュニケーションができる場をつくること。焚き火はそのために他にないその強力な手助けをしてくれます。

さあ、自然の中へ入って焚き火をやってみませんか?あなたの身近に焚き火がある。そしてその場でささやかなコミュニケーションが生まれる。心がほっと豊かになる。そんな焚き火を相棒にしてみませんか?

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