焚き火の場づくり現場からみえるコミュニケーションの本質

2021.11.11 (木)

3年半にわたり「焚き火の宿」を運営してきました。誰もが気軽に焚き火ができる、大人の隠れ家的存在です。来訪者の多くは二人連れ。ご夫婦、カップル、友達。組み合わせはさまざまです。

焚き火の宿の周囲に人はほぼいません。気兼ねするものもありません。静かに焚き火と向き合うことができます。

特にアウトドア経験者というわけではありません。むしろ未経験者が大半。「焚き火そのものをたのしみたくて来た」という声を多数ききます。

お客さまがやってきます。妻と二人で手分けして建物の中と外を案内します。ITで自動化して会わずに接客することもできる時代。でもあえて昔ながらのやり方でやっています。

お客さまと言葉を交わすのがいいから。ちょっとしたやりとりから何となく双方の人となりがわかります。これも小さなコミュニケーションのひとつだと思っています。

「じっくり焚き火をたのしみ、薪の置き方や風の強さによって炎が変わること、においや音、自分の手でやってみてますます焚き火がたのしくなった。さわやかな風と小鳥の声でアラームを使わず目が覚めた。五感が蘇っていく感じがした」とある来訪者の声。

焚き火をすると五感が立ちます。自然に親しむきっかけを焚き火がつくってくれます。プライベート空間の中で、自然の中、癒しを求めている人がこんなにも多いということを実感しています。

心穏やかにゆっくりとコミュニケーションを図り、自分と相手を確かめ合う時間になっているのだと思います。

初心者がひとりで焚き火ができるようになる講座も開催しています。

「火が点いた瞬間に感動した」「自分で火を育てて愛おしくなった」と参加者は口々に言います。「こんなあたたかい場にいるのは久しぶり」終わる頃には焚き火そのものもさることながら、自分がいる「場」の心地よさを感じている様子です。

世の中はあふれかえる情報と錯綜する人間関係で複雑化を極めています。現代人は人間が本来持つ五感を感じる機会が減っています。

五感を感じることで、「人間らしさ」を取り戻していきます。焚き火の前では誰もが「素直」になれます。素直になるというシンプルさこそ現代社会に求められていることではないでしょうか。

「安全安心な場」と呼ばれるものがあります。その場にいる人はみんな相手の話に耳を傾ける。受け止めてくれる。批判も否定もない。だから普段話せないようなことも言えてしまう。そんな場のことです。

安全安心な場は人に不可欠なものです。これがないと行き詰まってしまいます。多くは家庭がその役割をします。不足があれば外に求めていきます。「こんなこと誰にも話したことがない」と本音が行き交う場。サードプレイスと呼ばれるものです。

安全安心な場づくりは、10年以上運営している働き方コミュニティで一番大切にし、実践してきたことでもあります。自分自身がサラリーマン時代行き場を失った経験から来ています。

焚き火を囲んで、自然を感じる。その場にいる人と他愛のない雑談をする。雑談をするとお互いの気心がわかってくる。気心とはその人が本来持っている気質を意味します。

人の背景を知るとそれまでとは比べものにならない関係性が生まれます。今の時代、人は大なり小なり病んでいます。こんなシンプルなコミュニケーションが欠けているのかもしれません。

そんな安全安心な場を焚き火は自然に演出してくれます。火はからだを暖めてくれます。同時にこころも暖かくしてくれます。

あたかもみんなの前に焚き火があるかのようにイメージしながら場をつくる。すると不思議に和やかな空気が流れます。

世の中にオンライン化が普及し、効率や生産性といった無機質な言葉が前面に出ると、人が本来もつあたたかさや人間くささというものがどこかに追いやられてしまいます。結果、ぎくしゃくした関係性をつくる原因になります。

コミュニケーションとは、心と心が通う合うことです。決して話すことだけではありません。相手を思いやる、気にかけてあげる、認めてあげる気持ち。気持ちが通い合いをつくります。

焚き火の場ならお互い火を見るので相手の顔を見なくても済みます。火そのものが心を和らげてくれます。だから話しやすくなります。話すだけでなく、黙っていても通い合うものがあります。焚き火には不思議な力があります。

人と人の間に焚き火。焚き火がつなぎ目になることで「人間」になれる。焚き火の場は、昔からあったはずの現代人が忘れかけた大切なものを思い出させてくれます。シンプルな場に人間の本質を感じます。

今、必要なのは対話です。対話とは向き合う行為、エネルギーが要ります。でも今はこの人と向き合った方がいいと思うときがあります。そんなとき肩肘張らずに自然体で話ができたら、物事はもっとスムーズに進みます。これからもそんな「場づくり」にこだわっていきます。

▼「焚き火ファン」チャンネル登録はこちら▼

▼お役に立ったらシェアいただけるとうれしいです▼

関連する投稿

現在の記事: 焚き火の場づくり現場からみえるコミュニケーションの本質

お問い合わせはこちらからお気軽に

フォームからのお問い合わせ

お問い合わせフォーム »
⇑ PAGE TOP