焚き火でチームコミュニケーションを活性化する

2020.11.13 (金)

チームで焚き火をするとコミュニケーションが活性化します。常日頃の会社環境だけでは得ることができないかけがいのない体験をすることができます。本記事ではチームコミュニケーションと焚き火の関係、焚き火でどうやってチームコミュニケーションを活性化するかについてまとめました。

焚き火コミュニケーション研修のワンシーン

焚き火を介するとコミュニケーションが活性化する特性を生かして、組織やチームづくりを目的とした焚き火コミュニケーション研修を行っています。まずはその研修の様子をご紹介するところから始めますね。

参加者は、日々会社で顔を合わせている程度で、お互いを深くは知らない関係です。最初は遠慮しがち、様子見という感じです。まず焚き付け拾いをしに森の中を歩きます。木々の香りや空気を吸うことで開放的な気分になります。一緒に焚き付けを集める中でちょっとした会話が始まります。焚き付けは袋に入れて持って帰ります。それなりに重くなるので、袋を手分けして持つといったやりとりが生まれます。

持って帰ってきた焚き付けは焚き火をつくりやすいように細いものから太いものへと仕分けをします。「じゃあ、私がこっちへ運びますね」「ありがとうございます。私はこれで」お互いを気にかけるような声掛けが始まります。

次に焚き付けを組んでいきます。みんな目がきらきらしています。こうした作業をしていると子どもの頃に戻ったように無邪気な表情になるのですね。打ち解けた空気ができていきます。

いよいよ着火。火を点ける人、風よけをつくる人など自然な役割分担になります。火おこしは安定するまでが勝負。みんなで一つになって集中していきます。火が安定してくるとゆっくり座って火を囲みます。薪をいじったりくべながら肩の力を抜いたくつろいだ雰囲気になります。

誰からともなく会話が生まれていきます。「どんな仕事を担当しているのですか? 」「自宅はどちらですか? 」最初はちょっと緊張します。でも、そんな緊張はすぐになくなっていきます。知らぬ間に当たり前の会話になります。だんだんと雑談に花が咲いていきます。

アウトドアは開放的です。屈託のない笑顔があふれていきます。団らん風景という感じですね。しばらく時間が経過するとお互いのちょっと深い話にもなっていきます。普段話すことのないようなことも素直な言葉で出てきます。

場が落ち着いてくると適度な静けさが生まれてきます。話したい人が話し、黙っていたい人は黙る。会話の間に沈黙ができます。通常生活だとギクシャクする沈黙も焚き火の前ではまったく苦になりません。むしろその方が心が落ち着く感じになります。そのうちみんなが黙ってじーっと火を見つめている、そんな情景になります。

火を見つめながら心とからだが浄化されているような状態です。だんだん時間の経過を忘れていきます。いつまでも火を見ていたい、そんな感覚になります。あとかたづけをする頃には昔からの友だちだったような関係になっています。

どうですか? 驚くような光景ですよね。焚き火を囲む場づくりをすると自然にこんな状態が生まれていきます。この場で起こっていることこそ、チーム焚き火の原点になるものです。

「初対面だけど何だか打ち解けて話せた」「アウトドアなので開放的な気分になった」「あの人にはこんな一面があったんだと驚いた」「会議室で話していたらこんな話は絶対きけなかった」「その人が大切にしている想いを知った」

研修に参加した人が口々にする言葉です。

火があると自然に人が集まってきます。誰からともなく自然な会話が生まれます。みんなが同じ火を見つめているので相手の顔を見る必要がありません。面と向かってだとなかなか切り出せないことも焚き火の前では自然な会話になります。

無理して話す必要もありません。沈黙が許されるというか、黙っていても平気です。むしろ沈黙が心地良い不思議な状態になります。会話が途切れたら次はどんな話をしようかと必死に考えるのとは真逆。火を見ていたらそれが許される空間になります。言葉がなくても行き交うものを感じます。焚き火を前にすると、心が開き、言葉が言葉として伝わりやすくなり、そこにいる人の話を素直に受け止められるようになるからです。

焚き火が最高のシーズンになる秋から冬にかけて、森林の中は落ち葉が敷き詰められたジュータンになります。そんなジュータンの上に寝そべってみます。想像以上にふわふわしていることに驚きます。大地から温度感や土のにおいが伝わってきます。真上には澄んだ青い空が見えます。チームメンバーが同じように横に並んでいます。それまで抱えていたものを取り去った気持ちになります。同時に他では体験できない一体感を感じることができる瞬間です。

問題に直面したときチームで集まって解決策を考えます。でも答えを出そうと必死になってもなかなか解決策は見つかりません。何かいいアイデアを出そう出そうとしても同じことです。そんなときはただ焚き火の火を見つめながらボーっとしてみてください。雑念を捨ててフラットな気持ちになることです。ふとしたことでひらめきが生まれてきます。思考と思考の「間」をもつことが大切なのです。

焚き火のまわりは平等です。常日頃は地位の高い人や声の大きい人の意見で物事が決まっていく、そんな感じではないでしょうか。声の小さい人が他にないようなアイデアを考えていたりします。本来はその場にいる人全員から意見を引き出していきたいはずです。肩書きや社会的地位を脱ぎ去り、フラットな関係性になってこそ本当のチーム力は発揮されます。

いつ素の自分が出せるようになるのか? そしてそのことに自分が気づけるか? それができたときにブレイクスルーしたような気がします

焚き火コミュニケーション研修に参加した人の印象的なコメントです。素直な気持ちを言葉にしていますか? いたってシンプル、それだけのことです。一人ひとりが素直になることこそ重要です。焚き火の前ではみんな素直になれます。コミュニケーションとは話すことだけではありません。相手と気持ちがつながることです。「ありのままの自分」がどこまで出せるのか? チームづくりの基盤になる要素です。

輪(和)をつくることができる

火を見つめていると心が落ち着きます。普通だったら力んだり意識したりする気持ちがやわらぎます。話したくなければ話さなくたって大丈夫。それを許してくれる空気感。焚き火を囲んだ人同士は知らない間に仲良しになっていきます。焚き火が生み出す近すぎず遠すぎないちょうどいい距離感のおかげです。

場づくりとしての空間設定にはコツがあります。まず一つの場を4~5人にするのがベストです。この人数なら場にいる人全員の表情を見ることができます。3人だと話が限定的になり広がりがなくなります。6人以上だと意識が分散し一体感が薄れていきます。

次に車座をつくります。丸く囲むと話しやすくなります。鍋を囲むときや中華料理店で円卓を囲むときと同じです。できたら椅子に座るのではなく、地面に直接座る方法をおすすめします。火を見る目線が同じ高さになることに加え、大地との一体感からなのか気持ちが落ち着いてくるのがわかります。焚き火の炎は小さめの方がいいです。そうすることでメンバー同士がお互いの距離が近くなり寄り添い感が増すからです。

コミュニケーションを活性化するために、学んでおきたいのが「聴く力」です。聴くという文字には耳と目と心が入っています。単に聞くのではなく、からだ全体、全力で聴くという意味です。聴く力を身につけるためには3つのコツがあります。

一つ目が「最後まで聴く」です。相手と会話していると、途中で否定したり、話をさえぎったり、先走ったり、自分の都合のいいようにきいたりすることってありませんか?最後まで聴くとはこうしたことを一切せず、相手の話にしっかり耳を傾けるということです。

二つ目が「つなげる」です。相手の話をつなげてあげるという意味です。そのために大切になるのがうなずきとあいづちです。自分が一生懸命話しているのにうなずいてくれなかったら何だかさみしい気持ちになりますよね。相手の話にはきちんとうなずいてあげてください。あいづちとは「そうなんだ」「なるほど」「たしかに」といった相手の話の間でつなぐ言葉のことを言います。これがあるだけで相手はだんぜん話しやすくなります。うなずき、あいづちを打つ。シンプルですが会話のキャッチボールではとても重要なコツです。

三つめが「話さないで話す」です。会話の途中で適度な間や沈黙があるといいというものです。沈黙の中で人は相手の言葉を消化します。次から次へ出てくる会話より深みが増していきます。言葉だけでなく気持ちで相手とつながっていくというものです。ただちょっと高度な技術かもしれません。

この三つはいずれも日常生活のコミュニケーションでも持ち合わせた方がいい技術です。どれも言われると当たり前のようですが、意識しておかないとなかなか実践できるものではありません。ぜひ知っておいてください。焚き火を前にすると自然にそれができる状態になるから不思議です。なかでも「話さないで話す」は焚き火の場だからこそやりやすくなるし、大切さを実感することができます。

ネイティブアメリカンの伝統的な対話方法に「トーキングサークル」というものがあります。参加者が輪になってトーキングスティックという一本の棒を回していきます。その場では棒を持った人だけに発言権があり、他の人はその人の言葉に全力で耳を傾けます。特定の一人の人間にたっぷりと時間を与えて心ゆくまで話してもらうのです。「車座になって座し、話をすることでこころの内を共有することは、ネイティブの伝統である(ジョン・ピータース)」という考え方にもとづいています。古来より引き継がれた聴く力を身につける一つの事例と言えます。

焚き火は、適度な距離感と一体感の中、特別な時間を共有することができる他にない場です。また焚き火づくりの一連の作業の中からコミュニケーションとは何かに気づくことができます。こうして体験して気づいたことを火を囲んで話し聴きます。「自分はこんなことを考えていたんだ」「なるほどそういう視点もあるんだ」自分が発する言葉や相手の話に耳を傾けることで新たな発見、気づきを生み出します。焚き火は学びと自己成長を促す輪をつくる役割も果たしてくれるのです。

自然な協働が生まれる

初心者同士でキャンプに行ったときによくある話があります。到着するなり設営に追われ、慣れないいろいろなことをやっていたら、食事の支度がどんどん後回しになってしまった。身体を動かすのでお腹はどんどん減っていく。何とかBBQの準備ができた頃にはあたりが暗くなって何を焼いているのかわからなくなってしまった・・・こんなシーンです。アウトドアは不便です。食事だけでなく、寝る場所の確保、火や炭の準備まで全て自分たちでやらないといけません。

グループで野外に出かけるときをイメージしてみてください。まず出発前に場所やスケジュール、当日のメニュー決めるところから始まります。キャンプ場へ向かう道中のスーパーで買い出しをします。みんなでひとかたまりで買物をしているとまとまりもなくスムーズに進みません。

例えば、食材班とドリンク班などに分かれて動いた方が効率よく買い物ができます。カートを押す人、食材選びをする人なども適宜やっていきます。レジで支払いが終わると食材を詰めるための段ボールを用意したり、保冷用の氷を準備します。重くなるので一緒に車まで運んでいきます。手分けしてやることで段取りは良くなります。

現地に到着します。焚き火は、焚き付け集め、薪割り、火おこし、あとかたづけといった一連の作業があります。それ以外にテントやタープで居住空間をつくったり、食事の準備をしないといけません。食事は食材の用意にはじまり、かまどづくりや炭おこしといった作業まであります。「まな板を忘れてしまった!」いきなり予期せぬ事態が発生します。「どうしよう、困ったなあ・・・」「そうだ!牛乳パックで代用できないかな」こんなときこそみんなのアイデアを集めて力を合わせていきます。

テントやタープは何人かで一緒に立てた方が早くできます。火をおこし焚き火の面倒をみる人、水を汲んでくる人、食材を切る人、テーブルや椅子をセッティングする人、食器を配る人などそれぞれ自分ができることを率先してやっていきます。ちなみに食べることに専念する、盛り上げ役になるというのも重要な役割です。

何をしたらいいかわからない人は「何をしたらいい?」と質問して動いていきます。グループで出かけたときは段取りやそれぞれの役割分担がとても重要になります。動いている中で助け合う中でお互いの距離は縮まり、次第に仲良くなっていきます。

焚き火で料理をしようとしたらこれはまたひと苦労です。キッチンでつまみをひねったら火が着くのとは大違い。これまでお伝えしてきた通り、火おこしして安定させるまでには手間暇がかかります。火力調節は最大の難関です。苦労しながら扱うことで火のありがたみを感じることもできます。

苦労した分、試行錯誤しながら出来上がったときの達成感は格別です。みんなで一緒につくったごはんの味は言うまでもありません。「○○さん、料理上手なんですね」「包丁なんて持ったことがないよ」人は食べることに関わっているとき笑顔になります。一緒に料理をすると行為そのものがコミュニケーション活性化していきます。

ごはんが終わったらみんなであとかたづけをします。食器や鍋を集めて一緒に運ぶ。炊事場で洗い物をする。焚き火の燃えカスを廃棄しに行く。それぞれの作業の中から自然な会話と笑顔が生まれていきます。終わる頃には昔からの友人のような雰囲気になっています。

アウトドアでは基本的な知識は必要不可欠ですが、正しいマニュアルというのは存在しません。そこにある自然をそのままの状態に保つ気持ちが大切です。山の天気は変わりやすく突然雨が降ってくるなどもよくある話です。あらゆる状況下で自らの判断で対処していかないといけません。その場その場に合わせた臨機応変さが必要になります。不便さの中で一つのことを成し遂げるには何が必要かを体験していきます。

「その場の状況を判断して、自ら動くということを体験の中でわかった。この体験から職場でどうしたらいいかに気づくことができた」とは研修に参加いただいた方の声です。このように焚き火アウトドアは仕事に通じるものがあります。ビジネスも従来からある前例やマニュアルは通用しなくなっています。

「現場、現実、現時点」に視点を置いて柔軟に対応していく姿勢が肝要です。こうしたことを座学でいくら学んだとしても実体験がないものは腑に落ちていきません。今はパソコンやスマホで検索すればすぐに答えが出てきます。それだけでわかったような気になっています。でも実際に体験してみると頭の中で考えていたものと違う答えが返ってきます。普段やらないことが新鮮な刺激になり、脳細胞が活性化します。自然の中、不便さの中に身を置くことこそシンプルに答えを得る最短の方法です。

限られたリソースを活用しながらメンバーとの自然な協働作業を行う。作業の中から無意識のうちにコミュニケーションが生まれる。役割分担の本質を体感的に学ぶ。こうした中から仕事や人間関係でどうしたらいいかがわかるようになります。

今何が必要なのかを判断する。自分に何ができるのかを考える。そして自分ができることをやる。チーム焚き火で協働作業をすることで、個人がつながることでさらに大きな力になること、本当のチーム力とは何かを体感することができます。そして本当の意味での自律型人材の土台をつくっていきます。

個性をひき出し多面的に人を理解する

木を伐採して製材するとき、建築材になるのは木の真ん中の部分だけです。それも均一の幅、厚みになったものだけです。大きさが不ぞろいなものや周囲の部分は廃棄処分になります。ところが周辺の箇所も立派な木に変わりはありません。カットすればオリジナルの棚やプレートに様変わりさせることができます。さらに余った部分は薪にできます。均一でない方が薪らしくなります。

山の生活をかじるようになって、こうした廃材を集めては自分で加工して活用してきました。一面だけ見ると価値をなさないものがある一面では別の価値を生み出します。人も同じです。

会社での評価を考えてみてください。評価基準は一面的なものです。その人が業務で成果を出しているか否かというものです。働いている時間が長い分、会社での評価イコールその人の評価になってしまいがちです。これは良くありません。

「イベントがあるとき、Aさんは誰よりも早く会場入りして、誰よりも遅くまであとかたづけをしている」「段取りが悪い」という評価は一面的です。人の見えないところでコツコツ確実に仕事をする縁の下の力持ち。これがAさんの個性です。そしてAさんにしかない価値なのです。人を見るときは一面だけでなく多面的に見ていきたいものです。

10年来行っている働き方相談の中で、自分には自信がないという人がとても多い現実を目の当たりにします。その理由は認められることが少ないからです。もっとわかりやすくいうと、ほめられる機会がないからです。人は認められると自己肯定感が高まります。「今のままの自分でいいんだ」という気持ちです。自己肯定感が高まると自信になっていきます。

自信をつくる入口は「素直にほめる」ことです。良いと思ったことはそのまま口に出してほめてあげてください。それが個性を認めるということです。多面的に人を見ることで、人「財」としての個性を発見し、自信を身に付けるコミュニケーションの場づくりの必要性を感じてきました。

弊協会では定期的に「初心者のためのソロ焚き火講座」を開催しています。世の中ではソロキャンプが流行っています。ひとりでキャンプをしに行くことですね。ソロ焚き火とはひとりで焚き火をしに行くことを言います。今までアウトドア経験のない人でも安心してひとり焚き火ができるようになっていただく半日講座です。誰もが焚き火を気軽にたのしめるようになってもらう焚き火コミュニケーション文化を広める活動の一つです。

講座では、焚き付け拾い、薪の仕分け、組み方、着火や火おこし、火の維持、あとかたづけ、安全管理など、ひと通り焚き火づくりに必要な基本の知識はレクチャーします。でも「こうしなければいけない」「この通りやってください」というようなことは一切しません。

焚き付け拾いをしているとき「これって燃えますかね?」と質問を受けます。「どんな燃え方になるかやってみましょうよ」薪を組んでいるとき「こんな組み方ではだめですか?」と訊かれたら「ユニークじゃないすか!いいですねー」と答えます。

燃料になるかならないか、薪の組み方や火おこしの仕方に正解なんてありません。その人がやりたいようにやればいいのです。一つひとつにその人の個性が出るからです。講座で上手に火おこしができなくてもいいのです。それより自分らしさが出せたと思ってもらうことに重きを置いています。

日常の生活ではできないといけないというものがたくさんあります。ここでは自然相手の焚き火です。自分が思ったように事は進んでくれません。できなくていいでOKです。型にはめられる、マニュアル通りにやることに面白さはありません。みんながみんな画一的になったら広がりは生まれません。人はたのしいと思うことはどんどん吸収できます。そして自由で伸びやかな発想が生まれてきます。一方で興味のないことはいくらやっても身になりません。自分がやりたいと思うことをやるのが一番です。

組織が大きくなればなるほど個性は埋没していきます。個人が存在しない組織は活力を失っていきます。人はみんなそれぞれにこれまで生きてきた過去をもっています。年齢を重ねるにつれてしがらみや制約が増えていきます。何かの枠の中に入れること自体に無理があります。講座の中から一人ひとりの個性を知ることで個を認めることの大切さに気づいていきます。

「あなたはそのままでいい、そしてそのままがいい」

昔読んだ本にあった大好きなフレーズです。この言葉が言い合える関係性までいけたら、そのチームは本物です。

本気の対話から真の信頼関係が生まれる

話すことは「放すこと」です。自分の中にあることを話せば、だんだん心が開放されていきます。口に出して話すことはシンプルですがとても重要な行為です。

チームづくりの根幹になるのはホンネの対話です。だからといってホンネで話そうと言っても簡単にできることではありません。なぜなら職場やチームにはその人が置かれた立場や肩書き、権限などがあるからです。言いたいことがあってもここはぐっと我慢、そんな場面が多々ありますよね。

ホンネで言おうものならその後のしっぺ返しが大変なことになるというのが通例です。「今日は無礼講だからホンネで話していい」と上司が部下に対して言っている場面があります。「じゃあ、今日はホンネで言おう」とやった翌日には大変な目に遭う。これこそ典型例ですね。

本気の対話ができるようにするための大前提は「安心安全な場」をつくることです。安心安全な場とは、自分のことを受け入れてくれ、否定されることもなく、何を言っても安心で安全であるというものです。安心安全な場には、まず居心地がよくて心が開放できる環境づくりがスタートになります。自然に囲まれた中で、火を囲んで車座になり、炎をみつめ、心が安らぐ焚き火はその環境として最も適しています

次にその場にいるメンバー一人ひとりがどれだけ素の自分をさらけ出せるかがカギになります。安心安全な場は自己開示と他者受容の両方があってはじめて成立します。素の自分同士の対話を通じ、お互いの心へ自然にアクセスします。ありのままの自分を開示することで、お互いをより深く知り合い、認め合うことができるようになります。それが一人ひとりの個性、魅力ひいては可能性を引き出していきます。

焚き火コミュニケーション研修の場では、こうした関係性づくりを目的として展開しています。焚き火を囲んで、一日を振り返りながら一人ひとりがもつ悩みや思いを自然な形でひき出し合っていきます。同時に各メンバーがじっくり内省を促すことで今後の成長へつなげていきます。

研修のハイライトは、参加者になぜ今の会社で働いているのかといった問いから、その人の人生の生い立ちを振り返ってもらう時間です。一人ひとりが人生のライフラインというこれまで生きてきたプロセスを図解したものを使って、自分の生い立ちを話していきます。「こんな人生を踏まえてこうしていきたい」個人のオリジナルストーリーと夢を語る姿に元気と勇気を与えられます。

「人生の背景」を共有することで、今まで知らなかったその人の根っこを感じていきます。お互いがもつ意外な一面を知ることで、それまで上司部下でしかなかった関係が、人間対人間のフラットな関係性に変わっていきます。こうした貴重な時間の共有こそが本当の意味での相互理解を促す重要なステップになります。

「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」戦時中の名将、山本五十六氏の言葉です。まさにこの言葉示す通りです。仕事上の付き合いは表面的なものでしかありません。チームメンバーがお互いを理解し、かつ大切に思える関係であること。職場に戻ったときにこの想いは根っこに据えられることになります。

焚き火を絶えず燃え続けさせるためには真ん中にたくさんの熾火をつくる必要があります。熾火ができれば一度火が消えてしまったように見えても薪を足すことで再び燃え始めます。燃えないからといってやたらと薪をいじったり、何で何でと慌てたり、必死であおってみたりしたところで燃える炎は戻ってきません。

この様子はまさにチームと同じです。チーム内がうまくいかないからと手を変え品を変えていじっても一向に良い方向へは向いていきません。それはスキルややり方ばかりにとらわれている状態です。やり方を考える前に大切なのは「あり方」です。メンバー一人ひとりの個性や想いです。そしてメンバーが集まることでできる熱量です。このチームはどうありたいのかに視点を置くことです。真ん中のハートがあってはじめて事は動き始めるのです。

焚き火を囲んだらそこにいるだけでいいです。コミュニケーションスキルなんて必要ありません。むしろスキルなんて言っているからおかしくなるのです。コミュニケーションというとマネジメント、コーチング、傾聴、リーダーシップ、ファシリテーションだとスキルアップすることが重要だと考えてしまいがちです。もちろん学びを深めることはあっていいことです。ただこれらはすべて単なる技法に過ぎません。

目の前にいるのは人間です。大切なことは一人の人間が一人の人間として対峙する姿勢です。そのおおもとはハートつまり心です。前者をやり方、後者をあり方と呼びます。あってのやり方。この順番を取り違えているケースがたくさんあります。焚き火を介することで気づいてほしい根底の話です。

焚き火を育てることでわかる人とチームの育て方

焚き火は「育てる」ものです。実は焚き火をつくることはチームや人を育てることによく似ています。最後にそんな話でまとめていきたいと思います。

焚き火をつくっていくには下準備が必要です。着火剤にするスギッパや松ぼっくり、いろいろな大きさ、太さ、形、種類の枝や薪を集めてきます。火をつくるためのマッチ、火ばさみ、うちわなどを準備します。次に火がつきやすいように集めた焚き付けや薪を各々の特性に合わせて組んでいきます。

そして着火です。気温、湿度、風向きなど、今周囲がどういう環境でどんな状態にあるのかを把握しながら集中してトライします。着火は一度でうまくいくとはかぎりません。失敗と経験を重ねながらだんだんと上手くなっていきます。

火を燃える3要素は「燃料」「熱」「酸素」です。3つのうち一つでも欠けたらうまく燃えていきません。3要素を確認し、バランスをとりながら進めていきます。焚き付けに火がつくと大きな火になったように見えることがあります。でもそれは一瞬です。この段階で枝をいじったり、いきなり空気を送ったら火はうまくついていきません。まん中に熱をためることを意識しながらしっかり見守る姿勢をもつことが大切です。

細い枝から太枝、そして薪へ火がまわっていき始めたら、少しずつ次の薪を足していきます。薪から薪へと火が移っていきます。だんだんと火が大きくなり落ち着いていきます。こうして燃え始めた焚き火は安定した美しい炎を発するようになります。

やがて薪の一つひとつが熾(おき)になっていきます。熾は一番熱量が高い状態です。薪すべてを熾の状態にもっていきます。こうしてしっかりと熾火ができたら、一見が火が消えたように見えた状態になっても、新たな薪を足せばすぐに焚き火は燃え上がっていきます。熾がたくさんできることで火力がコントロールしやすくなり、料理も上手につくれるようになります。おいしい料理でみんなの笑顔の花が咲いていきます。

この一連のながれをチームや人づくりに置き替えてみましょう。木枝や薪がメンバーです。最初にメンバーを集めます。メンバー一人ひとりはみんな違う存在です。個人の個性を見定め、相互に力が出るような下準備から入ります。

燃料はその人の中にもともとある燃える熱源です。熱は元にある熱源が熱量を発するようにすることです。酸素は熱量を促すために送る風です。目の前の人をちゃんと観察して状態にあった手を施すながら見守っていきます。

こうしてチームが出来上がってくるとお互いがもつ個性と熱量が化学反応を起こしながらさらに大きく成長していきます。熾火つまりメンバー一人ひとりの根っこにあるエネルギーができるといつでもチームは再燃します。原動力になっていきます。それぞれを認め合い、相乗効果を発揮することで、心からたのしいと思える場になっていきます。

焚き火づくりをしながら、今自分が所属するチームやコミュニティがどの段階にあるかを把握してみましょう。そして次なる一手を打ってみてください。必ずや一人ひとりが輝くたのしい人と人とのつながりへと発展していくことでしょう。

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