焚き火で個人を尊重した場づくり|産労総合研究所「教育コンサルタントの自画像」

2018.08.06 (月)

このたび産労総合研究所様より執筆依頼をいただいた。「企業と人材」8月号の「教育コンサルタントの自画像」に掲載されている。労務・医療介護経営分野における出版を中心に、同分野での調査研究・提言を行う民間シンクタンクとのこと。以下校正前の原文を紹介する。

 

今の道に進んだキッカケ~ホンネ場づくりにこだわる原体験

僕の人生は一つの転機をもとに大きく変化しています。新卒で日立の子会社に入社。現場あがりで結果を出し本社に転属。全国プロジェクトリーダー、新規部門立ち上げなどで同期No1管理職、幹部候補生など文字通り順風満帆でした。

人生には何があるかわかりません。絶頂期のある日、運命を変える事件が起こりました。その日は幹部候補生研修の場でした。CEOは言いました。「君たちは選ばれた人間だ。会社の将来のために必要と思うことをホンネで言ってほしい」

「ホンネか・・・」心の中で問い返しました。「今日はそういう場なんだ。じゃあ、ホンネで言おう」心に決めました。現場ひと筋で仕事。最前線で苦労している人たちと向き合ってきました。お客さまあっての商売。なのにそれを軽視した本社のやり方に反発をもっていました。シンプルに考えたら答えは明確。いつか事を正したい!そう思い続けていました。

部屋にいたのは10数名。順番に話していきます。みんな当たり障りのない話ばかり。「そんなこといつも会議で言っている話じゃないか。CEOが求めているのはホンネ。今日はもっとホンネを言わないと!」思いが募りました。

僕の順番がやって来ました。「常務と部長の間で現場視点のコミュニケーションがとれていません。そのことで現場が疲弊しています。お客さま目線からすれば絶対改善すべきです・・・」言い終わると部屋中の空気が冷凍庫のように凍りつきました。気がつくと僕の後ろに常務がしかめっ面で座っていました。常務は1ヶ月後に社長昇格。「次期社長批判をした三宅」見えないレッテルが貼られた瞬間でした。

その日を境にサラリーマン急降下人生。左遷、降格、減給。あちこちの部署をたらい回しになりました。そして最後に行き着いた支社。そこには部下いじめで悪評高いトップがいました。組織の中で出っ張る杭。飛んで火にいる夏の虫とはこのことでした。

約1年にわたり来る日も来る日もいじめに遭いました。今でいうパワハラというやつです。毎日毎日人格否定の繰り返し。「お前のせいで家族がどうなるかわかるか・・・」脅しもありました。さすがに精魂尽き果てました。死んだほうがまし自暴自棄。追い込まれました。

行き場を失ったある日のこと。インターネットで一人のカウンセラーのサイトにたどり着きます。わらをもすがる思いとはこのときの心境。深く考えることもなく面談に臨みました。彼はひたすら僕の話に耳を傾けてくれました。話し終えるとふっと気持ちがラクになりました。四方八方真っ暗闇の長いトンネル。そこにひと筋の光が射した瞬間。衝撃体験でした。どん底から再起を図るきっかけになった日です。

「目の前の人と向き合い、心の声にしっかり耳を傾けること」この体験を境に僕の根っこに落とし込まれたものです。焚き火の場、人と向き合うとき、コミュニティや研修を担うときもっとも大切にしている原点です。

 

なぜ焚き火なのか?

サラリーマン時代の経験を通じ、自律して本質の話が言い合える場の重要性を知りました。どうしたらホンネで話せる場がつくれるのだろう?試行錯誤しました。たくさんの学びもしました。でもどれも作為的、意図的で自然体といえるものはありませんでした。

学生時代の野外活動研究会。仲間と一緒にキャンプや野宿、夜は必ず焚き火を囲みました。焚き火の前で普段口にしないようなことを言っている自分がいました。周囲の仲間も同じでした。フラットで自然体でいられる空気感。その映像が脳裏に残っていました。

みんな「そのままの自分」を出している。焚き火の場を使えばいいのではないか。火は人間に不可欠なもの。それが人のDNAに入り込んでいる。自然体が体現できるのは焚き火しかない。コミュニケーションと焚き火が重なり合った瞬間でした。

 

焚き火コミュニケーション研修とは?

「お互いを尊重しながらフラットに本質の話ができること」求める職場の姿です。そのために必須になるのが「安全安心な場づくり」。全てのことが受け止められる場です。

会社のいつもの環境でやるのは至難の業。自然環境に身を置く。五感を開く。森の中で焚き付けを拾う。協力し食事の準備をする。お互いを助け合う協働作業。相手への思いやり。焚き火の炎を見ながら自己開示。お互いの人生の背景を共有する。

コミュニケーションとは人と人との心の通い合い。人はすべて脱ぎ去って原点に返ったときに「自然体の自分」に戻ります。2日間の場から、組織人ではなく人間対人間の本質的な関係性を構築する。職場の基盤をつくる研修プログラムです。

 

人材教育の考え方

会社には社長から平社員まで階層上下関係があります。組織を動かしていくのに必要な要素です。でもそれだけで本当のチームはできません。フラットな場とはヒエラルキーのない状態を言います。所属する人が同じ目線で物事を考え実践できる場です。フラットでないと関わっている人に歪みが出てきます。組織がありながらもフラットにいこうという意識を持つことで日々は変わっていきます。

社長、部長、平社員であっても突き詰めれば一個人。それぞれの立場でそれぞれの悩みを持って仕事をしています。立場や肩書きを取り去ったとき「そのままの自分でいいんだ」と思えること。そこに関わっている一人ひとりの個人、個性に目を向けるようになること。お互いを認め合う場がその人の本来持っている力を引き出します。抱えている悩みやつらいことも洗い流します。

会社では家族の話、なぜ今この会社にいるのか、どうやって人生を歩んできたなど話すことはありません。実はこうした話の中にこそ、その人の大切なものは隠れています。今まで知らなかった一面を共有し、本当の意味でのつながりの濃さをつくる。個人の個性をちゃんとみてあげて、一人ひとりが輝く世界をつくる。人間対人間の関係性を後押しする「個人を尊重した場づくり」が全ての軸です。

日々たのしいこと、つらいこといろいろあります。時には自分の原点に立ち返ることがあっていいです。原点回帰すれば明日へ向けての活力ワクワク感が湧いてきます。「あなたはそのままでいい、そのままがいい」伝えたい根っこの思いです。

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