焚き火がつくる7つの効果

2021.01.20 (水)

「焚き火を囲むと何だか落ち着いた気持ちになった」経験した誰もが口にする言葉です。そもそも焚き火にはどんな効果があるのでしょうか?この記事では、実際に行った場づくりの中から体験し学んだこと、その場にいる人が実際口にしたことをまとめてみました。

精神的安定が得られる

自然の中で焚き火をつくるという行為をする。多忙な毎日では決して得ることができない非日常体験です。非日常な環境に身を置くことで心の開放感を得ることができます。日常生活を離れ、豊かな自然の中にたたずんだり、のんびりとした場所の空気の中にいるだけで、気持ちがリフレッシュされたりストレスがやわらげられたりするような働き。転地効果と呼ばれるものです。

文明から遠く離れた環境に身を置いたとき。災害など通常の社会生活を営む事ができない状況になったとき。人はストレス、不安、孤独を感じます。暗闇の中で灯る明り、じんわりとした暖かさ、料理の美味しい香り、炎のゆらめきと薪の爆ぜる音の癒やし効果。

焚き火がつくるこれらの要素が心の落ち着きを取り戻してくれます。「たのしいなあと感じたのは気持ちが落ち着いていたからとわかった」場にいた人のコメントが全てを物語っています。

五感が目覚める

五感を感じるという感覚を味わったことがありますか?五感とは視・聴・嗅・味・触の五つの感覚です。これらの感覚によって外界の状態を認識するものと言われます。つまり五感がないと外界の状態が認識できなくなるということです。現代人に失われがちな五感。それを一度に取り戻せるのが焚き火です。

では焚き火で五感を感じるとはどんなシーンなのでしょう?一つずつ描いてみましょう。

視覚は炎。焚き火の炎は一度として同じ形になりません。形が決まっていないところが視覚を呼び覚まします。ゆらゆら揺れる火を見つめているだけで心が落ち着いてきます。波の音、星のまたたき、風の音、小川のせせらぎといったものにみられる1/fゆらぎ。炎のゆらめきにもあると言われています。

聴覚はパチパチと薪が爆ぜる音。この音には独特の空気感があります。音を聴いているだけでゆったりとした時間がつくられる。焚き火の音だけではありません。木々が揺れる音、小鳥のさえずり。風がそよぐのにも音があるんだと気づくことができます。静まり返った林の中で聴覚は研ぎ澄まされます。

嗅覚は焚き火の匂い。単に木が燃えているのはない香り。薪の種類によっても香りは変わります。この木の種類っていい匂いがするんだなあ・・・そんなことに改めて気づく。風の方向で煙のながれも変わります。煙が目にしみます。本来の嗅覚とはこういうことをいうのはないでしょうか。

触覚は森や林の中での焚きつけ拾いから。軍手をはめる前に素手で地面の土に触ってみる。木の温もりを感じてみる。落ち葉をかき集めてみる。何気ない動作が手の感覚を呼び覚まします。薪をくべる。飽きることなくずっとやっていられます。素手で何かをするという機会があまりにも減っている現代。触覚はこんな些細なところから生まれるものです。

最後に味覚。焚き火を使ったオーソドックスなレシピといえば焼き芋。芋を濡れた新聞紙でくるんでアルミホイルで包む。それを焚き火の中に放り込むだけ。スーパーで売っている芋がこんなにもほっこりするのと感動を味わえます。野菜や肉も焚き火で料理すると食材そのものの旨味を引き出すことができます。いつも野菜、いつもの肉がこんなにも美味しいと感じから不思議です。食材そのものの味覚がわかるのは焚き火ならではです。

人工知能が普及するとこれまで人間がやっていたことがなくなっていくと言われます。先日もこんな番組をやっていた。ある人に何曲かを聴いてもらい、AIが脳波から好みの曲を想定する。その人が好きそうな曲をつくるというもの。すごい技術と感じる反面、そこまでロボットがやっちゃうの?という疑問が湧きました。

もともと人間に備わっているはずの五感。世の中が便利になる一方で五感はどんどん失われています。このままいくとどうなるのでしょう?人間本来の営みができなくなるのではないかと心配になります。現代人にとって五感を研ぎ澄ますことはとても大切なこと。失われていた五感を取り戻す。人が持つエネルギーが蘇る。焚き火にはそんな魅力があります。

自然体でコミュニケーションができる

昔あった落ち葉焚きの場面を想像してみてください。大人や子供、年代問わず近所の人が焚き火のまわりに集まってきて雑談をしています。「最近どう?元気にしてる?」何気ない声掛けがはじまります。お互いに気にかけ合う光景があります。

火のまわりには自然に人が集まってきます。適度な距離感をつくります。ひとつの炎を見るので一体感ができます。みんな炎を見つめるので相手の顔を見る必要がありません。だから自然な会話が成立します。

コミュニケーションというととかく会話をすることだと思われがち。そうではなく心と心の通い合いができることです。無理して話す必要はありません。話さなくても共有できることはあります。そのままの自分が出せることが大切です。

「おしゃべりしていても最後は無言。自分のことを考え、相手のことを考え、それでも間がもつ」この場にいた人が話してくれました。素の自分を出せること。自然体になれること。コミュニケーションにとって最も重要なことを演出してくれる。それが焚き火です。

自分とのコミュニケーションができる

ひとりで焚き火の前に座ってみる。焚き火が爆ぜる音しか聞こえない空間。じっと火を見つめる。だんだんと頭の中が空っぽになる。リセットした気持ちになる。いわゆる内省ですね。そんな中新たな想いを寄せてみる。自分はどうありたいのか。何がしたかったのか。根っこにあるものは何か。

ソロキャンプに行く人の目的で一番多いのは焚き火だそうです。baseKokkoにも一人で焚き火をしたいという人が一定数訪れます。じっと火を見つめることで自分自身を振り返っているのでしょう。

コミュニケーションは他者とするものと考えてしまいがち。でも実は自分との対話から始まります。自分を知ってはじめて相手のことを理解できるからです。とはいえそうそう自分とのコミュニケーションができる場ってありませんよね。焚き火はそれができる効果があります。

童心に戻れる

焚き火には独特の匂いがあります。その匂いは遠い昔の映像を思い出させてくれるようです。匂いは人の中に記憶されているのかもしれません。学術的なこととか定かではありません。でもそんな場面をちょくちょく見かけます。先日も焚き火体験にいらした方が印象的な話をしてくれました。

「焚き火の匂いでふと思い出したことがあります。おじいちゃんの家での出来事です。田舎だったので五右衛門風呂がありました。深いし入るのがいやでした。お風呂は薪で沸かしていました。一緒にやったこともあります。今あの頃が蘇ってきました。何だか懐かしい気持ちですね・・・」

こんなお話でした。話をする表情はとても自然体で晴れやか。子供だった「あの頃」に戻って純粋な気持ちになっていたからでしょう。一緒にいた人たちも口々に自分の子供の頃の体験を話していました。その場はとっても和やかな空気に包まれました。

「あの頃」を思い出してみたことがありますか?当時は日が暮れるまで必死に外で遊んでいましたよね。遊ぶこと以外何も考えていない自分がいました。宿題をやらないといけない。でもみんなと外で遊ぶことが全て。邪念なんてありませんでした。

忙しさに追われる日々を送っていると心が疲れてくることもあります。そんな時は「あの頃」に戻ってみましょう。すさんだ心が潤った気持ちになります。誰もがもつ子供の頃の原体験。そこにこそ自分自身の根っこがあったりします。焚き火でそんなひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。

ストレスを解消する

焚き火をつくるには一連の作業があります。火熾しにはまず焚き付けが必要です。燃えそうな木枝を探して地面を見ながら歩きます。「こんなところに焚き付けになるものがあったんだ」「木の実が落ちてる。何の実だろう?」意識を向けていると日頃は気にしないようなものが見つかります。その間とにかく焚き付け集めに必死になります。やってみるとわかりますがこれが意外にたのしいのです。

焚き付けが集まったらそれを燃えやすいように組んでいきます。最初に火つけになるもの、小さなものから中くらいのもの・・・どうやったら火が着きやすいのか?いろいろ考えながら組み立てていきます。自然な集中力が生まれます。

そして着火。マッチ一本で着火するには神経を集中しないといけません。こうして一発着火したときに達成感は何者にも代えがたいものです。これらの作業をやっているとき。まさに「没頭」状態です。シンプルな作業なのでなおさら没頭できます。作業中は頭の中に何もない真っ白な状態です。

そしてつくった焚き火をみながらゆったりする。落ち着いた気持ちになる。飽きることなくいつまでも炎を見ていられる。まさに他にない極上のリラックス空間です。

コーヒーを飲みながら綿の糸を紡ぐカフェがあるそうです。ひたすら糸を紡ぐ作業を繰り返すだけ。手先の感覚に神経が集まり頭の中の雑念が消えていくそうです。単純な作業はストレスがたまりがちな人の心をゆっくり解きほぐす効果があるようです。

集中とリラックスが一度に得られる。それも自然な形で。そんなに経験できることではありません。焚き火にはそんなストレス解消の効果があります。

個をひきだしチームをつくる

チームはどうやって力を発揮するのでしょうか?チームは個人のチカラでできています。メンバー一人ひとりは違う存在です。相手の話に耳を傾け、一人ひとりの個性を認め合うことから始めます。お互いに認める気持ちがないとそこから先には進ません。

そのためには「安心安全な場」であることがすべての基盤になります。安心安全な場とは自己開示と他者受容が相互にできる場のことを言います。「この場ではどんなことを言ってもいいんだ」そう思える場所です。ホンネトークができる場です。でも安心安全な場をつくることは言うは易し行うは難しです。

そんな安心安全な場づくりを自然な形でつくってくれるのが焚き火です。「こんなことまで話しちゃった・・・」焚き火を見ていると自然に自分を出せる会話ができます。その場を共にした人たちには独特の仲間意識が生まれます。

人を1で表してみます。1+1+1は3です。でも残念ながら1+1+1が1になることもあります。それは一人ひとりの力が100%発揮できていない状況です。1+1+1が3になる。さらには1+1+1が10になる。そんなこともあります。それができるのが本当のチーム力です。本当のチームはお互いの人間性を認め合い応援し合える仲間で構成されます。焚き火を囲んでフラットに対話する。本当のチームづくりにも焚き火は一役担う存在です。

火のある暮らしは人間の営みの原点

「1/fゆらぎが焚き火の効果に関係しているのですか?」「焚き火の効果はどんな理論から導き出せるのですか?」たまにこうした質問を受けます。研究者ではないのでその真意がどうなのかはわかりません。一つ言えることは焚き火のチカラは理屈で説明できることではないということ。自然のことが説明できたら奥深くないし、説明がつかないから面白いのです。

火は原始の時代から衣食住に密接に関係してきました。体を保温し衣類を乾かして寒さから身を守る「衣」。食物や水を加熱調理し安全に口にできるようにする「食」。住まいに明かりを灯し夜間でも活動できる環境を確保する「住」。

「暖をとる」「食をつくる」「明かりを灯す」人間生活の基本になるものです。火は古来から人を守ってきました。IHクッキングヒーターなどの普及で火を目にすることがなくなってきた現代。そんな中にあっても火がある暮らしは人のDNAに残っているものかもしれません。自然との調和から得られるものは計り知れないと言えるでしょう。

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